集中豪雨や台風!近年我々が経験した事が無い様な異常気象が次から次へとやってまいります。知らず知らずの内に日本が亜熱帯化しつつあるのかも知れません。
そこで今回は「集中豪雨で雨水が溜まった路上を走行するとどうなるのか?」をテーマに書いてみましょう。
こんな状態で走行している車をTVで良く見かけますが….!
これはあまりお勧め出来る事ではありません。
8月の豪雨で実際に起きた 故障事例を紹介しましょう。
アウディーA3です。
水位がこのアウディーマークの下くらいの位置まであったわけですが、エンジンのエアーインテークはご覧の様に上部にあり雨水を吸いこむ事はありませんでした。
ここで「なぁんだ!このくらいの水位だったら大丈夫じゃないか。」
と思われている人! です。
数日後、普通にエンジンをかけていつもの様に走行すると…….?
異常な変速ショックが発生!これは只事ではないと誰もが思う程の症状が発生しました。ひょっとするとミッションがダメかも? 100万円超えコースか?
幸いにも車両保険が適応されますのでお客様の費用負担は無いとの事。そういう事ならと 遠慮なく本気で整備に取りかかったのでした。(笑)
まずはコードリーダーで故障コードを読み取る作業です。????異常は検出されず!
こりゃ厄介かも?と思いつつあれこれ調べ勉強する事まる1日。「そうか!ここだ!」
このA3の場合、オートマチックは乾式デュアルクラッチ方式が採用されているのですが、そのミッションケースは密封式ではなくある程度の水位に達すると水が流入してしまいます。
そうすろとどうなるか? こうなります。 この上部のメッシュ部分から流入
幸いにもミッション本体内部やバルブボデーには流入の痕跡は無く、クラッチハウジング内部のみの汚泥水流入であった為、修理可能な状態でした。
取り敢えず車両からミッションを取り外し作業の開始です。
ミッションの構造は以下の様になっています。
丸を付けている部分が乾式デュアルクラッチとなります。以下は分解作業の写真となります。
通常のオートマチックのトルクコンバーターとは違いここにオイルは一切入っておりません。
ご覧になって分かるように真っ赤に錆付き手で回すと引っ掛かる様な感じです。
乾式デュアルクラッチを取り外してみれば、その内部はまるでMT車のクラッチと見間違うかもです。このミッションはバルブボデーが車両前方に設置されており、これまで様々なミッションを分解してまいりましたが初めて見るタイプです。
ミッションを降ろしてふとエンジン側を見ると「ゲッゲッ!なんじゃこりゃ」
皆さん雨水はきれいだと勘違いしてはダメですよ!ほうら このとおり!
泥がこびり付き乾式デュアルクラッチ内部は錆びて固着! 雨水は見た目割ときれいでも実は細かい泥をタップリ含んでいるです。
これではまともに変速するはずもなく交換に至ったのでした。
後は気を付けながら慎重に作業を進め、万が一の事も考えてハーネス類全てを脱着洗浄乾燥給油し、無事に完成したのであります。因みにこの症状はコードリーダーでは読み取れません。
これは自動車整備のプロが構造等を良く理解し故障の探求を進めていった結果「ここが悪い。ここしかない!」という結論に達したからこそ出来る修理なんですよ! 日頃あんまり整備してないからといってボクを舐めたらあきませんよ!
やる時はやる男なんですから!(笑)
その後の経過も良好な様子で お客様には大変喜んでいただきました。
お陰様で新型のミッションの構造がとても良く解り大変良い勉強になりました。
皆様も豪雨や台風の際、なるべくなら水の溜まっていない場所を選んで走行しましょう。
by 「日々勉強!とにかく勉強!」といつも従業員には言っている店長でした。
あぁ~俺ももっと勉強しとけば良かった。(今からでも遅くないかしら?)
などと心では思っているのですが…..。